青い満月
よしおかさくら


 いつか見て見たことは無いと思っていたらしい夢

君は原色オランウータン
君でさえそう思うだろ
それは事実なんだ

けれどもぼくより
少なくとも ぼくより
楽しいだろ
そうだろ そうだろ

ぼくより素敵じゃないか

だから ぼくは
ダークカラーねずみ
嫌味な奴だろ

もしもぼくに飽きたなら
ねずみとりでもかけてくれ

やっぱり見てはいない夢



 大人

人は夢をみる
はじめは大きく
それはたぶん
叶わないから

叶うように小さく
人は夢をみる

叶うように合わせる
それが大人



 紙ひこうきで

思いつくままの言葉を
書いたノート切り取って
紙ひこうきにしたから
君の元へ飛べばいい
君のてのひらに
ゆっくりと着陸する
たくさんの言葉は
君のものなのだから



 君に捧げる歌

人のメロディに流されてきたけれど
自分の歌声 持っていなくちゃだめだね
けれども いつでも 歌うのは怖くて
ひとりになってしまいそうで

外見だけの言葉に走らされて
何も見えなくなり始めた
声も出せない 歌えない
詞もたぶん 忘れていく

だから君は忘れずにいて
この歌のうたい方
いつも心で歌っていて
ここにひとりの僕のため



 教室の呟き

しらけたかったるい授業も
テストと聞くと静かな奴ら
「ほんとはみんないい奴だよ」
ひとり呟いた あいつの横顔
もう人影ない教室
ただ 離れていく理由が
欲しかっただけさ

いたずらさえからかって俺達
笑みだけでわかり合えてた
窓からは青すぎる空
カーテンが風に踊り続けている
机にうつ伏せたまま
笑えない今が悔しい



 情熱

もしも君の宝物を
盗む奴がいるなら
追いかけてつかまえるさ
殴られて体壊れても
後悔などしない
むしろそれを望んでいる

君のためじゃなく
想いがどれだけの力になるのか
知りたいだけ



真実の海で

いつ頃からか
ホラー映画もミステリー小説も
怖くなくなっていた
心の内では笑っていた
知っているか
現実より怖いものなどないんだ
今の君の心が見えたなら
ぼくはきっと逃げ出すだろう
ほら こうやって
映画のなかへ 本のなかへ
情けない走り方で
真実の海に君を置いて行く

そうだ
できればテレビのコンセントを抜いてくれ
ぼくも消えると思うから



 大丈夫

いつか見せた瞳なら
忘れてないよ
いつも気にしてるからね
大丈夫

泣かなくてもいいよ
ぼくがいる

抱きしめてあげよう
キスしてあげよう
ぼくがいる
ここに



 手紙

君の手紙は
封筒は
チョコレートの匂いがするよ
それでぼくは
呼吸するように抱きしめる
孤独について書かれた手紙
それは鋭く聡明で
しかし その生意気さすら
愛しい、
生きている証

甘い香りに酔ったまま
君の心を抱きしめる



 眠れない夜

女は知らない真夜中の
ある時間 ある瞬間
月が地上を照り付ける
僕が暑さと空腹に
眠れずにいるシーツの上
カーテンを抜けて照り付ける
月は美人だ 今夜も綺麗だ
満ちていようとなかろうと
優雅にこまめに光り輝く
ビルからビルへと飛び渡り
窓から顔を覗かせている男達へ
素早い目配せ零してく
思わず伸びるいくつもの腕
届かぬだろうと云わんばかりに
ひらりひらりと躱してく
それはあまりに艶めいていて
夜明けまでずっと眠れない
眠れない



 行方

一瞬で
本気になったわけじゃない
そうなれるのは何故なのか
わからないし
ましてや
恋なんて

でも すきだよ
もっと強く抱けばよかったって
会った後にはいつも思うのに
目の前にいても強くは抱けない
すきだよ
たぶんこれがぼくの気持ち
もしも これを本気と云うなら
恋はどうしたらいい
ぼくはどこへ行けばいい


自由詩 青い満月 Copyright よしおかさくら 2008-02-25 11:58:10
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