跡白波
望月 ゆき

夜の手のひらに
背中を押されて
チラチラと散らばる
港の明かりを見下ろしに
いつもここへ来る


デパートの裏の階段にすわり
わたしたちは
寄り添ったり
ときどき 無口になったりした


あなたはとても
遠く遠い夢を持っていて
よく わたしを忘れた
その間はいつも
通り過ぎる船の汽笛が
わたしの手を握ってくれた


船が行ってしまうと
いくつもの波がよせては返し
涙はそこまでつづいてのみこまれる
本当は追いかけてほしかった


そうしていつだってあなたは
涼しくたちあがり
わたしは波のことを忘れてしまう


わたしでない何かを追いかけて
わたしを忘れている間
あなたはいつも やさしい


自由詩 跡白波 Copyright 望月 ゆき 2004-06-28 09:21:19
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