夜の進水式/車輪
しろいろ




水底で送受信を繰り返すようなあなたのさびしさが好き



水道水注いだグラスを一度きり鳴らして僕らは夜へと、流れて



満月の灼熱のようなかなしみに入水してゆく二匹の蝶々



ふたりきりがらくたみたいなマリオネット千切れた糸で戯れあって、笑う



散ってゆくスロウスピードの花びらと(君のダンスと((サイレンが近い






(透明なしおりをはさんだ本を閉じ新たな故郷を探しに、僕らは)






君君君君の名前からこんなにも春があふれてあふれてあふれて



ヨーグルトにビーズを撒いてみにくくてきれいな食事で育ったぼくたち



さくら散れ破った遺書よ散ってゆけきみの明るいお墓のまえで



春にしぬコップ一杯の水葬で君だけ夏に生まれてください



坂の多い町できらきらを振りまいて生きてゆくんだ車輪のように






短歌 夜の進水式/車輪 Copyright しろいろ 2008-02-16 20:26:35
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