昼の月
松本 涼

昼に見上げた薄い月の
その不確かな存在感とよく似た
獣が私に住んでいる

恐らくそれはずっと其処で
私に気付かれる事を
待っていたのだろう

それにしても沈黙は余りに長く
お互いの黒い瞳がただ
向かい合わせなまま
獣はもう言葉を覚えてはいない

けれど獣の怒りはすぐ傍にある
そしてそれは私のものだ

獣はいつしか更に薄くなり
やがてその姿は見えなくなった

そして私は今 獣の中で
昼の月を見上げている


一体これは
いつの怒りなのだろう




自由詩 昼の月 Copyright 松本 涼 2008-02-14 21:28:18縦
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