がらくた
ガリアーノ

 右手の人差指と親指をL字型にして
 手製の拳銃をこめかみに押し当てよう
 柔らかく脈打つ右目の上の皮膚
 打ち破ればそのまま  遠いところへ行けるだろうか

 BANG.

 ありもしない引き金を引いて
 口で銃声を真似てみる
 勿論何も変わらないで  あたしは血を流したりはしない
 ただ人差指を頭に突きつけたあたしがいるだけ
 でも  あたしは  その度ごとにごとに消えてしまうあたしの意識を思う
 そのときのあたしの右手はブローニングやS&Wになったりして
 ずっしりと重くあたしのこめかみを冷たい銃口で閉じ込める
 鈍い無機質な鉛を吐き出しては皮膚を破り
 鮮やかな赤い血と一緒に記憶までこぼれさす
 そうしてあたしは抜け殻になって
 温度を失い固くなってやがて死んでゆく
 誰かのこころの片隅に潜んだまま  ひっそりと
 不特定の「誰か」の中でそうやって存えながら消えていくだろう
 人のこころは移ろいゆき眼に映るものはすべてまやかしだけれど
 蓄積されていく記憶がその人を作っていくから
 あたしに関わった人は“あたし”というパーツを皆持っている
 
 だから多分だいじょうぶだ。

 今このまま消えたって  あたしは消えたりしない。
 

 BANG.


 手製に拳銃  肌色のコルトガバメント


 引き金を、とめることができない。




自由詩 がらくた Copyright ガリアーノ 2008-02-12 23:57:01
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