甘いひと
恋月 ぴの

わたしを手渡されたときの
あなた
ちょっと驚いたように目を丸くしてたよね
ぎこちなく両手で受け取ってくれて
すなおにお礼を言ってくれた

わたしは
この日のために生まれてきたようなもの
だから
あなたのそんな仕草がいとおしい

たとえ仕事上の義理であったとしても
そこに何らかの気持ちが込められていて
はにかんだ笑顔と「ありがとう」
感謝してもらえるなら
それはそれで良いのかなと思ってしまう

ひとり暮しの小さな部屋に帰った
あなた
わたしの素顔を見つめてくれて
嬉しいような
恥ずかしいような手つきで
甘い一粒を口に含む

ね、美味しいでしょ
わたしは
この瞬間を思い描いてきたのだから
口のなかで優しく溶けて
とびきりの甘い夢の世界で遊んであげる




自由詩 甘いひと Copyright 恋月 ぴの 2008-02-12 22:04:53
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