泣かない子供
灯兎

今もまだ だめなんだ ただ会いたいって思ってしまうんだ
ひとり呟いては 同じ迷路へと入って 同じように迷い込む
辿って行ったのは あなたの笑顔によく似た シロツメグサ

一人になったあの夜から 始まったこたえあわせ
手紙のすき間に浮かび上がる 薄紅と黄緑の音符
流れるメロディから 甘い絶望たちが降りてきた

形はないけれども 信じていかれるもの
信じていないけれども そこにあるもの
どちらを大切にすればよかったのだろう

いずれにせよ 何も変わらなかったのかもしれない
でも うしろ向きに歩く道化を 誰が笑えるだろう
うしろを向いて生きるという言葉は トートロジー

愛というのは きっと ただの一行詩にしかすぎない
それは あなたの名前にも似ていて 好ましいと思う
赤墨だらけの 一行詩を 僕はとても素敵だと感じる

そんなふうな感じ方を 僕に教えてくれた君は
いまはもうすっかり すりきれてしまったけど
それはそれで いっそう 愛しいかもしれない 

僕が人を愛するやりかたというのは 実のところはとても素直で 
「理屈のバリアをはずしてふと外側から眺めたら、わけもわからず一ぺんに
 涙にくれてしまうみたいな場所」に 落ちていくことなのだと気がついた

そんなふうだから とてもまっとうには生きていかれそうにない僕だけど
最後に 君には忘れてもらいたいことが あなたには伝えたいことがある 

僕が君を子供みたいに愛したことを 忘れてほしい
僕があなたを愛していることを 覚えていてほしい

そのかわりに僕は 愛することを覚えて 恋することを忘れる


自由詩 泣かない子供 Copyright 灯兎 2008-02-11 18:33:24
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