拾われたひと
恋月 ぴの

紫色のくちびるを震わせ
熱いコーヒーで暖を取るわたしに背を向けて
あなたはストーブに薪をくべている

見覚えのあるチェック柄の毛布
あなたの匂いを胸一杯に吸い込んでみた

冬の嵐の去った
砂浜に打ち上げられていた
わたしの身体
あなたはふたりで暮した日々なんて
とうに忘れてしまったのか
表情ひとつ変えることも無く
わたしの身体を無造作に背負い籠へ放り込んだ

願い続ければ叶うことがある

背負い籠の中にはあなたが拾った
曲がりくねった流木とか
ハングル文字の読み取れるペットボトルとか

光の届かない海の底で
わたしは
あなたに再び逢えることを願い続けていた
ぶっきらぼうで
お世辞のひとつも言えないけれど
時折見せてくれる子供みたいなしぐさが好きだった

昔のように
あなたの好きな料理を作ったりは出来ないけれど
懐かしいこの部屋のどこかに
わたしの身体を飾ってくれたなら
満月の夜。寄せては打ち返す波の鼓動を聴かせてあげる



自由詩 拾われたひと Copyright 恋月 ぴの 2008-02-08 22:14:25
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