路上で無料占いをしていた時の話
よだかいちぞう

90%知りたい
だけどそれはやめておく

死ぬのはいくつの歳か
それを聞きたいけど
聞かないことにする

と、57歳のおじさんが言った



ぼくの座る
駅前の公園のベンチの前には
柵があった

その柵が
公園と通勤客を
分けていた

だから公園に入るためには
柵と柵のわずかな隙間から
入ることが許されている

おじさんは公園の中に入らず
柵ごしからぼくに
まずはと千円札をくれた

おじさんはぼくが勧めても
公園には入らなかった

おじさんは公園には入らず
柵に両腕を乗せて
ぼくに話し掛ける

先のことを聞くのは嫌だから
過去のことを知りたい
ぼくは57歳なんだけど
まだ一度も結婚したことが無い
もし結婚をしていたら
いくつの時だったか
知りたい

そう云って来るのだ
過去を占ったことは
いままでやったことがなかった

おじさんの顔形
風采は悪くなかった
けっして
女には不自由はしなかったはずだ



ぼくの占いで出た数字を云うと
頭をのけぞって
そのころのことを思い出そうとしていた



ぼくは間違っていた
おじさんが居なくなってから気付いた

こう占えばよかったのだ

おじさんはいつ
柵の中に入らないと決めたのか?

ぼくは見当違いに公園の中を占っていた




自由詩 路上で無料占いをしていた時の話 Copyright よだかいちぞう 2004-06-23 15:36:14
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