予言ライフ
佐々木妖精

寒気が
どっさり
目覚まし時計を押しのけ
郵便受けには
号外の雪が
詰め込まれている
のだろう

起きぬけのトイレから
スニーカーをつっかけ
目を閉じて
つま先からゆっくり踏みしめ
見上げる

一秒後も降ってま

した

した

した
的中した結果をたたえ


凍りついた自転車へ
動けないよと宣告し
四行におよぶ厳粛な詩を
白インクでサドルに刻む


まつ毛にたゆたう
くすぐったい液体を
こぶしでぬぐい
袖口に鼻水をこすりつける
であろう
やっぱりそうであったろう
という予言を
すみやかに実行し終え

達観し
見渡した
あの隙間

融雪ホースが
深く積もった昨日を
バカ正直に教えてくれる

から

もう迷子には
なれないんだ
なあと
スニーカーを
蹴り上げる

切り忘れていた爪に引っ掛かり
その角度からして裏向きに落ち
間違いなく雪溜まりへ落下して
靴下は重い風邪を引くであろう

滞空時間で予言し
的中する喜びと
裏っかわの希望へ
潜り込める安らぎを
味わうかのように
ゆうっくり足をおろす




靴が
斜めに突き刺さるという
裏切られた墓標に
予言者は笑みを浮かべ
埋もれていく


自由詩 予言ライフ Copyright 佐々木妖精 2008-01-17 11:35:03縦
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