くすぶる
佐々木妖精

ホームレスが灰皿に
深々と頭を下げている
制服の女性が後ろで睨みつけている
歩道に頬杖を付き
Yシャツに血が滲む
彼女の脚の下
フォーカスをぼかし
そこいら中に降ってくる
皮のアイスピックを眺めている
150度後方で警官がジャラジャラと手錠を弄ぶ
あらゆる人の中で戦火がくすぶっている
避けようと這えば這うほど突き刺さり
彼等が衝突を避けていると知る

点字ブロックは愛を口にせず
戦争を知らない
愛を知り得るものだけが愛すべき人を殺す
愛を知る者が
だけが私を避けていくので
立ち上がると血が袖口から杖を汚し
相応のベッドを求めて転がる

中華まんの臭いがする彼は
ボロキレや垢を何枚も剥ぐと赤ん坊になり

バーキンの彼女は
パイ生地を一枚一枚剥ぐことでやはり
りぼんやなかよしに出会ったばかりのあの子になり

手錠の音は軽く
拳銃に水を込める

従妹が
セーラームーンごっこをねだったあの子が
血を流し合う

誰かにとって大切なあの子が
愛を感じはにかみ口にして
誰かのちっちゃい子にミサイルをぶち込む

仰向けになって
平成に適応しようとする
耳を揉みほぐして指をしゃぶる
塩っ辛く生臭い鉄は
食えたもんじゃない

原罪?
埃の積もった1円玉だ



スカートをホチキスで塞ぎ
涙流さぬ産声を組み替えた脚の隙間で抱く

口元で焼夷弾という音がくすぶっている


自由詩 くすぶる Copyright 佐々木妖精 2008-01-12 14:22:34縦
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