心臓をたもつ為の、遺された
石田 圭太

(きみは近く
 足元から古い崖が、伸び悩み

 きみはすぐ下のことが分かる)

 ひどく、近く
 じっとしている
 長いこと
 息を奪われて、呑みこんだ夜
 ふさわしい音はながれて
 口ずさんだ
 無言歌
 きみは近く
 足元から古い崖が、伸び悩み
 きみはすぐ下のことが分かる
 音よりも歌にある、きみは
 音よりも歌に、ある
 きみは近く、より近く
 あるきみは音よりも近く、歌に19年そして
 息のようにしてながれている

 一体いつから(どこから)ぼくを眺めていたのか、きみは
 ゆるやかに、音階のずれた日溜りの(たえず)過去について覚え
(たえず)未来について巡らず、しかしきみは生きていく無言歌
 夜をこちらに(朝をあちらに)語ろうとする(黙ろうとする)
 無言歌

 受け取らなければならなかった、きみに

 ぼくは、わからない歌を贈り返す
 きみは、わからない歌を贈り返す

 
 +


 やがて育つきみと(ぼく)のような、時
 と時、の間で、ここは
 時間について話し合うところ、ここでは
 それなりに近く、あまりにも遠い
 みずのない、うみの話もできる

 わずかに陸も残っている
 しろく、せつないくらい遠くまでみえる




自由詩 心臓をたもつ為の、遺された Copyright 石田 圭太 2008-01-09 03:37:07
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