水槽
山中 烏流

 
そのとき私は
えら呼吸を覚えて
水掻きを思い出して
水面の揺らめきに
涙するのだろう
、なあ
 
 
水面下、/足跡は水泡になる
いずれかの色を知り
私は爪先から
桃色を(失っていく/のだ。
一度眠ったあとは
遂に肌色(が消え(る。
その過程を辿る、
必要性は/無いというのに
だ。
 
 
/水平線が随分と遠くなった気がする。陸を歩く魚は、退化し始めた水掻きを引きずっていた。寸刻魚と目が合う、離す、合う。二度目の接触のあと、私は水中へと沈んだ。それとなく水掻きに触れる。まるで処女膜のようだ、と感じる。小さな亀裂のあと、水泡が頭上に消える、見る、消える。水面が、限り無く白に近付いた。/
 
 
冷たい(それは、白く
さざ波をたてた/あと
箱庭を模して
黒く縁取りが成され、る
 
その(隙間に似た
わずかな隣接を経て
地面は/音も無く
沈んで
(、浮かぶ
 
 
切っ先が描く
弧状の水泡帯は
いつしか、歩行の術を
忘れさせて
私のまぶたを
ゆっくり、と、閉じながら
尾びれの法を
伝えるのだろう
、か
 
 
母を思い出す/夕日、
地平線は(既に。細い光と
、溶けた
 
羊水/が、零れていく
私、の水掻きは
早々に(進化を/早めて
爪が
生える、生える(欠ける
 
 
破れ(る、た。ていく、
 
 
 
そのとき私は
えら呼吸を忘れて
水掻きを破り取って
水面の揺らめきに
涙するのだろう
、なあ
 
 








 


自由詩 水槽 Copyright 山中 烏流 2008-01-03 18:42:14
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