年賀状
チアーヌ

何を考えているのか
さっぱりわからなかったので
別れたはずなのに

なぜか毎年
年賀状だけが
律儀にやってきた

母は
それを見るたびに
面白がって笑い
わたしは
ちょっと渋い顔をしながらも
やっぱり笑った

何故笑うかというと
内容が内容だからなのだけど

「車を買い替えました」
「那須に別荘を買いました」
「○○に家を建てました」
などの
自慢話系が
わざわざ見事な写真入りで送られて来るのだ

一体何が言いたいのかさっぱりわからなかったのだが
たぶん強がっているのだろうと

振ったのは確かにわたしだったのだけど
それはわたしが
ご立派な彼の「自慢の彼女」になるには役不足なのかなあと
漠然と思っていたから

そういうことが積もり積もって自分に自信を無くしたから
一緒にいるのがイヤになってしまった

恋は勝ち負けではないというのは当然のことだけど
振られたことがよほど悔しかったのか
それともわたしに未練があるのか

もう興味はないわ
そう言ってあげる代わりに
どんなに連絡があっても
長いこと無視してあげた

最後に彼と会ったのはずいぶんあとのことで
北向きの薄暗い喫茶店の明かりの中
10歳も年上のあなたはいい年をして相変わらず独身で
他人行儀な態度を崩さないわたしに
何度も何度も「可愛い」と言ってくれて
とても残念そうで
そのとき初めて

なんだか悪いことをしたような気になった

最初から好きじゃなかったのはわたしの方で
あなたはわたしに
常に強がりを言っていただけだったということに
はじめて気がついたから

わかりやすい自慢は
クジャクの羽根のようなデモンストレーション
だったんだね

ねえ

自慢の彼女に
最後までなってあげられなくてごめんね

贅沢ばかり言ってごめんね

高飛車でごめんね

何を貰っても当然だと思っていてごめんね

尽くしてあげないでごめんね

キスをめんどくさがってごめんね

やれればいいんでしょみたいな態度でごめんね

年賀状を見て笑っちゃってごめんね

ごめんね





自由詩 年賀状 Copyright チアーヌ 2008-01-03 00:02:28
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