刻の砂
銀猫


さらりさらさら、刻の砂
さらら、今日の出口は見つからず
さらり、昨日の砂は無い

時計のなかでは
あどけない頬が
片隅にほんのりと笑っており
記憶の岸辺に
くすくすと
無邪気な声を打ち寄せる

まだ幾つかの悲しみを知らず
やさしさを知らず
また
幾つかの幸福を知らない

無表情に返される天と地との入れ替わり
すべての持ち物は様変わり
されど
昨日は昨日の
今日には今日の理由があり
とくり、とくり、と打つ脈は
ささやかな歴史を巡る

さらり、さらさら時の砂
さらら、どこから注がれて
明日に零れてゆくのやら

下弦の月は知らぬふり
もしも天の星砂ならば
少しは煌めこうものの




自由詩 刻の砂 Copyright 銀猫 2007-12-27 14:23:11縦
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