解放されたからだ
佐々木妖精

ハンガーが足りないため
シャツとセーターを7枚着込む



窮屈な身体をもたれ自室の戸を開け
間取りを読み
鏡だけの部屋で鏡が
なぜ
縦にあと3センチ長くないのかを
考える

天井が3センチ低いからだ

見上げた先で身をかがめ
覗き込む彼と目が合う



インターフォンが幾重も折り合って鳴る
こだまする
一歩も動けないのは
彼がどんな対応をするのか監視してて
動けない
からだ

出口を見つけるため
ピストルを打ったら反動でぶっ飛んでしまい
服だった塵と
ぶち破ったガラスが大気となり
ビー玉の雨が舞う
銃口はどこへ向いていたのか月で考える
ここは月だ
ここは月だからだ

紫陽花のような地球外知的生命体ウサギが二房
奪還した星条旗の上で
毛皮の宇宙服を着込み
実りの秋を待っていた

真空切り餅を
クレーターを掘って耳で包装し
あなたに差し上げますと
鼻をヒクヒクさせ
3メートルジャンプする
首と手を横に振って深々とお辞儀をし
新たなクレーターを創り
丁重にお断りする

声が出せない

からだ



残った彼らを
解放するため
2発の弾丸を込め
地球に銃口を向けると
胸に穴が開き
思考が空間にばら撒かれ
銃に代弁してもらうのを
辞めることができた


自由詩 解放されたからだ Copyright 佐々木妖精 2007-12-26 10:57:01
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