胸一杯の排気ガス
鴫澤初音

を、ありがとう。ね。

浜崎あゆみの声って伸びないなあ、なんて今更言ってみてさ、
君の手の平をそっと齧ってみる。君の肘をそっと舐めてみる。
ぺろぺろ。ね。

鳥たちが冬を支えて帰ってくる。柔かな羽が折りたたまれた流線型、
間違えのない道を歩いているね、彼等の温かな羽毛を纏った身体。
ステップを踏んで、水を切りとっていく、オレンジの足ひれ。
僕ら、まだここで泣いていてもいいかな、
雑草だらけの川辺で足元も見えなかった、

手を合わせて、祈る。指先まで交わらない僕らの唐突に幼かった身体。
妹が言う、「お兄ちゃん、明日もこんなの?」言う、
鳥が二羽、空を飛び越えていった。2003年秋、まだ僕らは
何も知らずに、いた





未詩・独白 胸一杯の排気ガス Copyright 鴫澤初音 2007-12-24 02:28:09
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