愛すること
わら

きみがしあわせになれれば
それでいいと願っていたあの頃は
うそじゃないと信じたい


だけど、
なみだがこぼれて止まらない



今も、ぼくは、
いつかのこころの真ん中に立ちつくしている

気づかなきゃいいことも気づいたり
感じなきゃいいことも感じたり

こんなぐちゃぐちゃなこころで
生きていけるわけないじゃないかあって
叫びだしたくて

そんな大きな声を出せる度胸も
なにかを振り切れる勇気もなくて

不器用さを重ねて
この男の辿った道を
思い出す度に

ただ、情けない

情けない 情けない



ろくな言葉も
みつけられなくなったのが
けっきょくの、こたえで

だれよりも苦しむことが
だれよりも己を押し殺すことが
誠実さだというのなら
ぼくは、きっと
だれよりもきみを想っていた
ずっと、ずっと、
想っていた
それだけは信じれる



きみから、不意に、
「あい」なんて言葉を聞いたときから

笑えるくらいに
哀れな運命に翻弄された後でさえ
泣きだしそうな空を振り切って

すれちがう、ほんのひとときも
ずっと、わらって
なにかをつくろっては
自分に問いかけつづけてきた

性も生命も
愛という名の姿も

正しさなんて、みえないよ
きみになにができただろう?



これでも、がんばってきたんやよ

ずいぶんと長い間
いろいろなことを

こっけいかもしれないけど
約束みたいなものも
忘れないでいた

あのかなしい歯車の中で
好きだとは、もう言わない
もう、二度と涙はみたくない

あなたの笑顔に出会えるなら
それでいいんだと言いきかせつづけてきた

ただ、もしも、
ふりむいてもらえるならと
ずっと、走りつづけてきたんだ
おれなりの精いっぱいを



いくつかの通りすぎる季節の中で
あなたを支えれたりできただろうか?

空気みたいで
やっぱり、気づいてももらえなかったかな

けっきょく、
情けない男でしかなかったのかもしれない



何度も、
自分の愚かさをかきむしったよ

ぼくたちは、
ずいぶんと、大人になったね

そして、
ずいぶんと、いろんなものがこわくなった

うまくなんて
どれだけ笑えたろうか?

あなたにではなく
残像におびえているのです


押し殺してきた言葉のほとんどは
かなしみなんだ
その隠してきた痛みさえも
だれにも知られないまま消えてゆくことが
それ以上にかなしい

長い長い日々の中で
幾度となく繰り返した嗚咽を
すこし、堪えきれそうになくなった
こんな夜をゆるしてほしい



それでも、

幸福を望んでいたんだよな?

このカラまわりのまま、
もうすぐ、さよならを伝えなきゃいけない


なにもできなかった


こころのそばには、いられなかった


こころから、
人を愛することを教えてくれて

ありがとう





















自由詩 愛すること Copyright わら 2007-12-14 18:36:50
notebook Home 戻る  過去 未来