スター
小川 葉
彼は彼の心の中の都市で
素敵な歌を歌う
僕は時々その歌を聴きに
都市に行く
そこで彼は誰からも理解され
誰のことも理解している
眩しい太陽
美しい恋人
すべての人々を魅了し
すべての人々に注目されること
そのすべてを彼は
彼の心の中の都市で
手に入れている
今日も彼は
彼の心の中の都市に
生きている
調子はどうだい
と聞くと
知ってるくせにと笑う
僕も僕の心の中の都市で
歌を歌う
太陽はまだ昇らない
美しい恋人はまだいない
たから僕は
彼の歌を聴きに
彼の心の中の都市に行くんだ
彼こそがスターだ
もう現実の世界になんて
まったく興味がないし
意味だってないんだ