じゃがいもの花
容子



泥のついたじゃがいもを手に取り
母さんはわたしへと目を向け
折り返し台所の窓に映った自分へと
そして再びわたしへと目を戻す

心なしかじゃがいもの泥を洗い流すときの
母さんの手は力強く見え
その姿を見かけた翌朝のわたしは
きまって化粧に時間をかけ一等の笑顔で
母さんにおはようを言う

それでもなお朝食卓に並ぶ
調理されたじゃがいもは
お椀の味噌汁の中から
母さんと同じ目で
わたしを眺めてくるものだから

泥のついたじゃがいもを手に取り
母さんがわたしへと目を向け
折り返し台所の窓に映った自分へと
そして再びわたしへと目を戻す

そんな母さんを見かけた夜は
布団の中へとうずくまり
土の中へもうずくまる

泥臭いわたしから生えたじゃがいもの
新芽がいずれは咲かすその花を
じっと待ちじっと待ち
やがて朝を向かえる




自由詩 じゃがいもの花 Copyright 容子 2004-06-14 20:01:42
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