廃寺
肉食のすずめ

一、二、三、四、五、鐘の音が五つ鳴り響いて
休符がひとつ

雲母の欠片の降る
廃寺の砂利 男は座って
手の無い赤子のように甘える

直立する足の甲を刺すのは羽虫か枯葉だ

廃寺の砂利 男は物陰で
初恋の少女のように爪先立ちする

風がここに集まってきているのは
気のせいだ 中央は静かだ

廃寺の砂利 男は
病人のように
引っ掻き 腕を回し 喉を捻じり
抱き締め 髭を伸ばし 柱にもたれ
病人のように
助けを請い 目を閉じ 恨み言を言い
よりを戻し 石を蹴り 地団太を踏んで

ああ なかなか手に入らないものだ
今は 枝になって震えている

凝縮し!爆発し!孤立する二畳の箱庭!

荷物を片付け終わった男は歯を剥いた 
揮発した顔の脂が十メートル先のここまで届いて
樹脂の匂いに混じって消え失せた

一、二、三、四、五、鐘の音が五つ鳴り響いて
休符がひとつ


自由詩 廃寺 Copyright 肉食のすずめ 2007-11-23 19:07:22縦
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