雲場池、入水
銀猫

夕映えを湛えた水面は
紅葉の最後に火照り
林に、ひっそりと隠れて

  雲場池

湧き水の注ぐ豊かは
常に清冽を極め
水鳥の、
その羽根の下にある深さを忘れさせる

黄色や褐色の落ち葉を踏みしめ
水際を歩くと
褪せた草があたりを縁取り
冬が近い証を見せている

山間の、此処で透明を貪りたい
感情はどよめいて
靴を脱ぎ、爪先を水に浸す

嗚呼、と小さな声が洩れる
左右の足から欲望が拡がる

  この、神聖な凍れる温度を
  ふくらはぎまで、両膝まで
  誘惑は鋭くこころを冒す
  この、甘美な温度で身体を貫きたい

そろ、と踏み入れる翡翠の水面
靴を揃えてきただろうか






自由詩 雲場池、入水 Copyright 銀猫 2007-11-10 23:10:34
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