目覚めのお茶
石川和広

疲れて食卓にたどりつく

おやじは定年退職した
おやじがつくった飯を食う

箸を落とす

拾おうとする
かがめる腰が、まげにくい

どうも
おもいどおりに体動かん

ものわすれる
あれも
これも
空気を吸ってることも
タバコをすいかけてたことも
灰が落ちそうなことも

あぶない
あぶない

母の声

ゆうぐれに
救急車のサイレンの音
どこだろう
みんなで気にかける
どこかな

お迎えきたか


まだまだ


ぼくはいつ頭がはっきりするんだ?

死者に刻まれた
木の裂け目のような
さざなみの
岩礁の

無限に
この夕暮れに
しずかな
顔を思い出し

一時間震えて
少し気が確かになり

母に
お茶をたのむ


自由詩 目覚めのお茶 Copyright 石川和広 2004-06-10 14:57:43
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