雑魚寝
佐々木妖精

マンガを読み
その続きを楽しみにしていた
大学の先輩を思う

彼は三年前に病死したが
今もよく頭の中で会う

頭の中で彼も
このマンガを読んでいるだろうか

先輩の好きだった人物が闇に堕ちたが
彼はそれを受け止められただろうか



パチンコが好きだったおじいちゃんは
原付に乗って孫の頭へ駆け込んだ
それから二十二年経ち、
俺は時々おじいちゃんに会うためパチンコを打って
だいたいは負ける



二年前に老衰で死んだ愛犬
骨となって綿の袋に包まれ
ポケットの中で生きている
夜道をフラフラと
老いぼれた犬の散歩に付き合い
疲れたろうと抱き上げうちへ帰り
お守りに水を数滴
飲ませる



気がうねって触れ
叫び出す日々が続いた
これまで出会った人
みんながいる時期に戻りたい
それが理想



先輩が生きていた時期
もうおじいちゃんはいなかった
おじいちゃんが生きていた頃
まだ愛犬が生まれていなかった
三人が皆
この世に存在した地点は

どこにもなかった


どこにもないのに
そこへ戻りたい
そう喚き
毎日は鬱屈としていた



気付くまでに
あの世の存在を信じ込み
死を志し
三年
かかった



みんな
この頭の断片となって
いつでも会える
彼らがしたいと思えることも
してあげられる
見てくれも中身もない頭だが
ここが理想の場

頭を振るとカラカラ音がするのは
頭が悪いからじゃなく
先輩がマンガを読んで笑っているから

雑踏に侵食されると途方もない安らぎに支配されるのは
おじいちゃんがエンジンふかしているから

お守りに手を当てると優しくなれるのは
十九年間撫で続けた毛並みに包まれているから



さて寝よう
今まで出会った全ての人と
一つの布団で


自由詩 雑魚寝 Copyright 佐々木妖精 2007-11-05 22:23:59
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