小原あき

赤くなった紅葉を
散歩のお土産にくれたのは
あまりにも小さな手に思えたからなのでしょうか

わたしはそれを栞にしました
いつかわたしを未来へ繋いでくれる
贈ろうとした名です



鸛は忙しいのでしょうね
あちらこちらに
特に紅葉の香る今は
赤ん坊の手を咲かせているから

握り締めてはいませんでした
あなたが送ってくれた
小さな紅葉は
元気に開いた
小さな手みたいでした



また、愛を握り締めてはいませんでした



寂しくはありません
あなたがいてくれるから
それにいつか
鸛はわたしたちにもやってきます

ぽっかりと開いた
秋の空が
もう少し待ってくれと
言っているような気がしてならないのです



ぱたん、と閉じた本を
また、開いてみれば
そこに栞はいます
そして、この秋を思い出します



真っ赤に燃えるような小さな手に
やわらかな温もりを感じるのは
少しだけ今日が
暖かな日だからでしょうか



遠くのほうで
子供のはしゃぐ声が聞こえます

それがいつか
あなたの
わたしの幼い頃と
そっくりなものが聞こえるようになったら

また、本を開いて
この秋を思い出し
栞に
ありがとうを言いたい








自由詩Copyright 小原あき 2007-10-29 18:55:26
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