飛行の内側
やまぐちふぢ子

潜り込めこの家に
この家に潜り込め

何故かって


遺伝子の記憶
羊水の細波、
原初の叫び
意識の拡張。




潜り潜り潜り潜り込め
この家に。

何故かって、
理由はないよ、

しいていえば
この家の二階さ、この家の二階にある恍惚が欲しいのさ、

潜り込め、
この家に潜り込め

何故かって

この家の二階から
見える紅い空を手に入れるんだよ
90年代の幕開けを
告げるサイレン鳴り響く

紅い空


潜り込め、潜り込めこの家に
潜り込め


この家の二階じゃなきゃ
駄目なんだ。

紅い空を駆け上がり、


永続する負荷
と傷み
を感じながら

輝く星のように堕ちていく、おちていく
あの嫌な顔した
ボクラの二個目の太陽に

口づけするのさ、


この高揚
この反復
あの世界
あの宇宙


さあ


潜り込め潜り込め
この家に。


自由詩 飛行の内側 Copyright やまぐちふぢ子 2007-10-27 18:10:35
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