ごめんなさい。
小原あき

野良犬「怖い。人間は怖いいきものだ。」
飼い犬「なぜ? あんなにも優しいのに。」
野良犬「あなたは頭がおかしくなっている。理不尽に死を与える人間のどこが優しいのだ。」
飼い犬「人間がそんなことをするなんてあり得ない。あなたは嘘を吐いている。」
野良犬「人間に歯向かうだけで死刑は執行されるんだ。」
カラス「そうだ。人間は自分の言うことを聞かない者を容赦なく切り捨てる。」
飼い犬「でも、人間は温かいご飯を無償で与えてくれる。」
カラス「無駄に命を食い漁って、結局は食べきれなくて捨てるんだ。それを誰が綺麗にしているのだと考えないのか。」
飼い犬「でも、人間は温かい寝床を与えてくれる。」
野良犬「だけど、邪魔になると容赦なく取り上げる。」
 猫 「そうね。」
 猫 「だから、神経を逆撫でしなければ良いのよ。」
 猫 「適当にごまをすっておけば、簡単に何でもしてくれるわ。」
カラス「何様だ。」
飼い犬「人間様だ。」
野良犬「馬鹿馬鹿しい。」
飼い犬「切り捨てたのはあなたたちじゃないのか。」
飼い犬「いつだって人間は、わたしたちに優しい。」
野良犬「違う。」
カラス「人間は自分たちが一番の権力者だと勘違いしている。」
野良犬「何もわかっていない。」
 猫 「だから、利用するのよ。」
飼い犬「わたしは利用なんてしていない。」
飼い犬「人間が愛情をくれるから、愛情を返す。そうすると、また愛情が返ってくるんだ。」
植 物「ニンゲン ハ キマグレ デ トテモ コマル」
 猫 「わたしたちを気まぐれな動物と言うけれど、人間こそ気まぐれよ。」
野良犬「与えたり。気に入らなければ切り捨てる。」
飼い犬「いつかはわたしも切り捨てられる?」
野良犬「歯向かえば。」
植 物「ニンゲン ハ ヤサシイ デモ トキドキ コワク ナル」
飼い犬「それはわたしたちもそうだろう?」
飼い犬「歯向かえば、容赦なく切り捨てる。」
飼い犬「生きていく上で、邪魔であれば攻撃をする。」
野良犬「でも、」
カラス「殺したりはしない。」
 猫 「それは、一概にそうとは言えないわ。」
蝶 々「でも、捕まえたりはしない。」
蝶 々「なぜ、わたしたちを放っておいてくれないのか。」
 猫 「コレクション。」
野良犬「馬鹿馬鹿しい。」
カラス「いきものをなんだと思っているのだ。」
 猫 「何とも思っていないんじゃないの?」
飼い犬「わたしたちもコレクション?」
野良犬「そうかもね。」


わたしは人間だ。
他のいきものではない。
他のいきものと話し合えるわけでもない。
全ては想像で、間違っているかも知れない。

他のいきものの代弁をしたつもりはない。
わたしは全てを知らない。
全てを知りたいとも思わない。

全てを知っているということは、
膨大な宇宙よりもはるかに大きな頭を持っていなければならない、ということで、
そんなでっかい頭を持って生きていたいとも思わない。

ただ、
わたしはひとりのなんでもない人間だ。
ただ、
愛犬と散歩をすることにこの上ない幸せを感じる
なんでもない人間だ。




未詩・独白 ごめんなさい。 Copyright 小原あき 2007-10-22 11:42:53
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