心中・焦
輪橋 秀綺

くちびるが恋しい あなたの
くつろいだときの 醜く ゆるんだ 肉
に まんまと隠れたつもりでいる
あの ぬるい 感触 が

こんなにもつめたく つまらなく なってしまいました

それでも なめたい
あなたを 記憶ごと まるごと 全て吸い込みたい
そして  嚥下して あなたを 強く感じ取りたい
 感情が 私を小刻みに震わせる/

私は舌を出す
硬直したあなたを咀嚼する様に眺める
冷たい皮膚へゆっくりと着地する と
私の舌は味覚して あなたは酷く臭う
誰も見ていないまま 
長く 重い 時間だけがゆれる 部屋

(私の内側で 私たちは やわらかく かたくなに 溶け合う)


もうすぐ私たちはいなくなるでしょう
あまりにも近づきすぎて 反発して
完全なさびしさを映し出すでしょう

対照して  

途方もなく うつくしく        




……





自由詩 心中・焦 Copyright 輪橋 秀綺 2007-10-20 22:28:11
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