ジョビジョバ
虹村 凌

ジョビジョバ ジョビジョバ
こぼれ落ちてゆく
ふたつに割れた夕陽から
大切な何かが
ジョビジョバ ジョビジョバ
シンクに沈んだスペアキーが
物言いたげに冷たく鈍い目を向ける

またやっちまった
薄いコーヒーはもうすっかり冷め切って
細かいほこりが浮かんでいる
火の消えきらない煙草は未だに
曲がりくねった煙をあげて
換気扇に吸い込まれていった
またやっちまった
いつの間にか眠っちまったよ
人もまばらな午前二時のファミレス
遠くの席で誰かが電話越しに喋ってる
聞こえない

このままもう一度眠っちまおうか
ジョビジョバ
グラスの中の氷は音をたてて溶けてゆく
ジョビジョバ ジョ ジョビジョバ
氷みたいな炎みたいな
銀色のゼリーが口からこぼれていく
ジョ ジョビ ジョ ジョバ

自分だけが不仕合せだとカン違いしている
帰りたくない
鍵をなくしたから
帰りたくない


自由詩 ジョビジョバ Copyright 虹村 凌 2007-10-05 15:09:45
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