ひとり
銀猫


十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける

十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう

それらの
秋という色や匂いに混じって
羽虫の擦れ合う音、
音が
からだのなかに
静かな水溜りをつくってしまう

わたしの、
手、
繋ぐはずの手のひらを
探しあぐねて
今宵、
夢の逢魔が刻にさまよう

寒くなる、
予感と、

掻き合わせた胸と





自由詩 ひとり Copyright 銀猫 2007-10-03 18:58:53
notebook Home 戻る