kirameki
はらだまさる

―――水脈と暗殺のためのエチュード

 「水脈」

蛙たちが、並列させられ
陽光を反射しながら追いかけてくる
眉間とこめかみの、土色とゴールドの表皮上で
古い汗は、不規則にぼくらを疾走して
愛だとか、力だとか、未来だとか、可能性とか
無限のエスポアールを反芻する

水のない不安な土地で、感情を譲歩し合う人々の
欲望し、乱立する森で精霊だけが歌うのだ

母音にしがみつく
コスモスに描かれた輪郭だけで
田畑や果樹園を濡らす雨は、死んでゆく

ぼくらのつばさは、鮮やかな呼吸で立ち上がり
指輪を外し、首飾りを捨てて群衆のうえに飛び上がる

古代湖は、いまも輝いている
ひかりを知らない
水脈のうえで、


 「暗殺」

二十七歳で、アイツらは死んだ
ぼくは三十二歳
まだ、何にもしていない
きっとこれからも何にもしないけれど
生きようと思っている
田村隆一だって
七十五まで生きたんだ

谷川俊太郎が暗殺されたよ
享年七十六歳
先日、そんな
谷川さんから電話があった
「どうせなら詩人に殺されたいもんだね。」
唐突に、そんなことを言うから
びっくりしてしまって
言葉を失ったけれど

(そうやって詩が殺されてしまったことに気がついたとき、目が覚めた)

彼らは夢の中でも、
ぼくらにとっての
詩人であった


 「並列する二編」

蛙たちが、並列させられ           二十七歳で、アイツは死んだ
陽光を反射しながら追いかけてくる            ぼくは三十二歳
眉間とこめかみの、土色とゴールドの表皮上で   まだ、何にもしていない
古い汗は、不規則にぼくらを疾走して きっとこれからも何にもしないけれど
愛だとか、力だとか、未来だとか、可能性とか    生きようと思っている
無限のエスポアールを反芻する              田村隆一だって
                        七十五までは生きるんだ

水のない不安な土地で、感情を譲歩し合う人々の 谷川俊太郎が暗殺されたよ
欲望し、乱立する森で精霊だけが歌うのだ          享年七十六歳

                             先日、そんな
母音にしがみつく               谷川さんから電話があった
コスモスに描かれた輪郭だけで 「どうせなら詩人に殺されたいもんだね。」
田畑や果樹園を濡らす雨は、死んでゆく   唐突に、そんなことを言うから

ぼくらのつばさは、鮮やかな呼吸で立ち上がり    びっくりしてしまって
指輪を外し、首飾りを捨てて群衆のうえに飛び上がる  言葉を失ったけれど

(そうやって詩が殺されてしまったことに気がついたとき、目が覚めた)

古代湖は、いまも輝いている              彼らは夢の中でも
ひかりを知らない                   ぼくらにとっての
水脈のうえで、                      詩人であった


 「kirameki」

蛙たちが、整列させられ、二十七歳で、アイツらは死んだ
陽光を反射しながら追いかけてくる、ぼくは三十二歳
眉間とこめかみの、土色とゴールドの表皮上でまだ、何にもしていない
古い汗は、不規則にぼくらを疾走して、きっとこれからも何にもしないけれど
愛だとか、力だとか、未来だとか、可能性とか、生きようと思っている
無限のエスポアールを反芻する、田村隆一だって
七十五まで生きたんだ

水のない不安な土地で、感情を譲歩し合う人々の谷川俊太郎が暗殺されたよ
欲望し、乱立する森で精霊だけが歌うのだ、享年七十六歳

先日、そんな
母音にしがみつく、谷川さんから電話があった
コスモスに描かれた輪郭だけで「どうせなら詩人に殺されたいもんだね。」
田畑や果樹園を濡らす雨は、死んでゆく、唐突に、そんなことを言うから

ぼくらのつばさは、鮮やかな呼吸で立ち上がりびっくりしてしまって
指輪を外し、首飾りを捨てて群衆のうえに飛び上がる言葉を失ったけれど

(そうやって詩が殺されてしまったことに気がついたとき、目が覚めた)

古代湖は、いまも輝いている、彼らは夢の中でも、
ひかりを知らないぼくらにとっての
水脈のうえで、詩人であった



未詩・独白 kirameki Copyright はらだまさる 2007-10-03 01:06:35
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