振り子時計と雪の記憶
プル式
小さな雪が消えた
春にはまだ少し遠い
小さな六畳間で布団に包まりながら
暖かだった昔を思い出している
子供の頃に感じたより
少し力の弱い空腹の中で
ただ眠れない意識が研がれていく
夢を追いかけてすべてを捨てたのは僕
それでも待っていると言ってくれた君
僕は生活に追われていつしか本当に
君を捨て去り女を抱いた
そうして余計に独りになった
いくつかの過ちを重ね
犯罪との境界線に立つようになった
いつしか世界から色が消えていった
仕事に見切りをつけ地元に帰ると
女は売り女になっていた
僕は彼女を真っ直ぐに見る所か
声をかける事さえ出来なかった
声を掛けて来たのは彼女だった
何気ない
他愛のない会話の後
日常のような声のままで彼女は言った
なぁ、あんた
それでも うちの事、好きかい?