振り子時計と雪の記憶
プル式

小さな雪が消えた
春にはまだ少し遠い
小さな六畳間で布団に包まりながら
暖かだった昔を思い出している
子供の頃に感じたより
少し力の弱い空腹の中で
ただ眠れない意識が研がれていく
夢を追いかけてすべてを捨てたのは僕
それでも待っていると言ってくれた君
僕は生活に追われていつしか本当に
君を捨て去り女を抱いた
そうして余計に独りになった
いくつかの過ちを重ね
犯罪との境界線に立つようになった
いつしか世界から色が消えていった
仕事に見切りをつけ地元に帰ると
女は売り女になっていた
僕は彼女を真っ直ぐに見る所か
声をかける事さえ出来なかった
声を掛けて来たのは彼女だった
何気ない
他愛のない会話の後
日常のような声のままで彼女は言った
なぁ、あんた
それでも うちの事、好きかい?


自由詩 振り子時計と雪の記憶 Copyright プル式 2007-09-27 05:48:13
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