硝子の唇
銀猫

硝子の風が
きりりと秋の粒子で
二の腕あたりをすり抜け
寂しい、に似た冷たさを残して行く

野原は
囀りをやめて
そうっと十月の衣で包まれている

わたしは
それを秋とは呼べず
かと言って
陽射しはとうに
きんいろを忘れている

萩の赤紫に染まりながら
きみの便りを開くと
望んでいた言葉は
いつしか感傷に姿を変えていて
掌にふるふると振動し
その感触に耐えきれず涙を落とすと
もう、きみの気配は消えて
足元でかさり、と
落ち葉のいちまいになる


思い出未満の恋心が
唇をなぞる日、
ひとり





自由詩 硝子の唇 Copyright 銀猫 2007-09-20 19:52:53縦
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