なだらかな羨望
ロリータ℃。





君なら何処までも行ける気がした



終わりを迎えた世界の片隅で
不純物を交えないその精神だけがまるで至福
崩壊を迎えた石造りの町の中で
たたずむ君のスカートが退廃を孕み風に靡く



王族の城
幸せに大きく暮らした人々の小さな家並み
たたずむ埃とそれを動かす不透明な風
人が暮らした跡 跡 跡
此処は墓場



君の白い腕が愛でるその小さなしゃれこうべ
君が触れる世界 見せる世界は
どうしてそんなに綺麗なんだろうね
この狭い世界で君は僕と同様様々な泥を浴びてきたはずなのに
君の潤んだ掌は全ての不浄を洗い流す
そんな 綺麗に浮かびあがる君に嫉妬していたんだ
そして愛していたんだ



どうか僕が朽ち果てるとき
君が側にいてくれますように
大概勝手な願いだけれど
もし僕が朽ち果て風に消える事も無く
この町より醜い遺跡に成り果てたら
君のその潤んだ不透明な指先で僕の醜さを撫でて欲しい
例えその指が歪んでも それでも君は笑うのだろう?


儚く崩壊したこの町にも風は平等に吹き付ける
僕の荒れた心にも君という雨が降り注ぎ心地良い

僕を此処で終わらせてくれ
出来るなら君のその満たされた掌で
優しく引導を渡してほしい

君が何時しかいなくなって
僕が何時しか狂う前に
僕は此処から動かないまま 立ちすくむ



君なら何処までも行ける気がした



君は何処までも綺麗な人間だから
自分の醜さを直視できる筈もなかった
恐怖だけは何処までも僕の肌を滑るのに
どうして君のその手を求めてやまないのだろう










自由詩 なだらかな羨望 Copyright ロリータ℃。 2007-09-09 10:56:30
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