おれも女に生まれたら、ワンピース着てみたいな
わら

ぼくには声はないよ

さけんで さけんで
声はきこえなくなってしまったよ
ぼくは、うたえないよ
ただ、卑屈な笑みしかつくれないよ


正直、今日も死にたいと思っているよ
病気と言ってしまえば、それまでだけど
ずっと、そうなんだよ
自分でも、よくわからないよ

ロックは何と戦ったか?
とか、
そんな、かっこいいことなんて
わかりやしないし
つっ立ってるだけが、ぼくの姿だったよ

小さな箱の中でなら
ぼくは許してもらえるのかな


生きてく叫びなんて
途方もなくて
失くしてくものばかりがふえていく

行き場を見失って、ずいぶんと経っていて
それでもカラダは
都合よく消えてはくれなくて


どこにもゆけないんだ

詩に「生」をすがるように
岸辺にしがみついているんだ


そうなんだ
わらをも掴むようになんだ


生きていかなきゃならない、この現実では
しょせん、そんなものは
わらのようでしかあれないんだ

泥のように
この手もとでくずれてゆくんだよ


書きつらねども、書きつらねども
凡庸な才には、ろくにカタチを成さず

せめてもの救いにもなれなかったコトバを
引きちぎっては、くしゃくしゃに投げ捨てて

転がる紙くずは
まるで、ぼくのこころのようだよ




ぼくたちには、かなしみをきく耳があり

ぼくたちには、かなしみをみる目があり

ぼくたちには、かなしみをつむぐ手があり


ぼくたちには、それを受け入れる心臓がある






ぼくには声はないよ
ぼくは、うたえないよ
ふるえるような音をきかせられないんだ

ぼくは字だよ
ぼくは詩だよ

耳鳴りを起こせやしない
かたまりだよ

そうなんだよ
いいんだよ





その女はさけんでいた

ねぇ、
もっと、きかせてよ

悲鳴のような歌声を
生きるための鼓動を



共感がいたみを和らげるならば
ぼくは、だれかのそれになりたい

ぼくのなにかを分け与えられるなら
この乳房を切り取って、あげるよ


なにもできやしない
なにもできやしないけれど

言葉にしなかったら
ぼくたちは終わっていくんだ

なにも声を上げなかったら
そこに居なかったのと同じようなんだ



いくつかの記憶と忘れられないこととを
塗りつぶして

だれにも理解されやしない孤独も
もう腐りはじめていて


薄暗い個室で待ち合わせた女は
指名したのとはすこし違っていて

それでも、
微笑みしかくれないメイド服を着た女よりは優しくて
太ももに頬寄せていた


どちらも嘘だから
その微笑みの意味なんて、どうでもいいんだけど

終えた後には
感じちまったことが胸の空洞にこだまして

やっぱり、
言葉なんて、みつからなくなる

その生きてく姿だけが
どこか凛としているようで





なにを思えばいいんだよ?
なにを紡げばいいんだよ?




食って
飲んで
吐き出して
また、
ほおばって

今日も、また、
死にたいここちを掻きむしって




ねぇ、
きみは、なにをうたっているの?

なにをさけんでいるの?

ぼくは、結局、
こみ上げる、なにもを伝えれやしないよ



きみは、どんなふうに生きているの?

だれも、ぼくを殺してはくれないよ



もっと、きかせてよ
ずっと、きかせてよ

 
耳鳴りが消えないように




























自由詩 おれも女に生まれたら、ワンピース着てみたいな Copyright わら 2007-09-07 03:51:59
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