京王線の彼氏
チアーヌ

顔が
いい感じで
寝転んだ姿が
可愛くて
何を考えているのか
よくわからなかったけど
ちょっと好きだった

京王線が好きで
就職したら
千歳烏山あたりで
一緒に暮らそうって
言ってくれた
「まぁそれはないだろうな」
って
思っていたけど

恋愛って
なんであんなに
キラキラしてるんだろう
何もかもが
どうでもよくて
たいしたことじゃなかった

雪の降る場所といえば
長野しか知らない
都会の人で
連れて行ってくれたけど
東北出身のわたしには
本当は
珍しいものなんかなにひとつ無かった
まぁでも
「きれいね」
とか
言ってみたり
スキー履いて
転んでみたり

これでもいろいろ気を使った
恋を盛り上げるためには
演技だって必要だから
本当はどこを探しても
本気なんかなかったけれど
京王線沿線で一番自殺の多い場所を教えてもらったり
新宿駅西口で待ち合わせをしたり
した

相性は良くなかったし
長く付き合うつもりも無かったのに
別れたときは
寂しくて
どうしてだろうね

京王線に乗ると
もしかしたら
あったかもしれない
別の人生のことをたまに考えます
千歳烏山のあたりを通ると
やっぱり彼はこのへんで暮らしているんだろうか
なんて
もうずいぶん昔のことなのに
思ったりします


自由詩 京王線の彼氏 Copyright チアーヌ 2007-09-03 21:25:14
notebook Home 戻る  過去 未来