おおきな手と長い腕
佐々宝砂

彼は待っている、
おおきな手と長い腕をひろげて、
彼は待っている。

彼はひとつの特権を持っている、
おおきな手と長い腕をひろげて、
彼は特権を行使する。

しかしその特権をどんなに行使しても、
悲しむべき事態を防げないことはあるのだ。

彼はときに抗議したくなる、
不甲斐ないディフェンス陣に、
文句のひとつも言いたくなる、

それでも彼は、
再びおおきな手と長い腕をひろげる、
抗議のためにではなく、
攻撃のためにではなく、

ボールの行方を絶えずうかがいながら、
守るべき聖地にすっくと立つ。



(過去作、2002年のオリバー・カーンに捧ぐ)


自由詩 おおきな手と長い腕 Copyright 佐々宝砂 2007-09-02 05:45:54
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