その口をキスで塞がないでいる
虹村 凌

「で、なんなの?」
「え、何が?」
「何が?じゃなくて、どうしたいの?」
「んー、どうしたいんだろうね。」
「はぁ?意味わかんない。」
「うん、俺自身意味わかんない。」
「頭おかしいんじゃない?」
「まぁね。」
「でさー、結局何したいの?」
「まぁ、添い寝とか。」
「はぁ?何で?」
「ん、気分。」
「意味わかんねーし。」
「俺もだ。」
「添い寝してどうすんの?」
「いや添い寝するだけ。」
「しねーのかよ。」
「しねーよ。その氣は無い。」
「このアタシじゃそそらねぇってか。」
「いや別にそうじゃなくて、そそるけどしねぇよ。」
「更に意味不明だし。頭おかしいんじゃない?」
「今はする気が無ぇってだけだ。」
「はぁ…マジはぁ、って感じだし。」
「ふーん。」
「いや、ふーんって何?喧嘩売ってる?」
「いや売ってない。」
「あっそ。ならいいけど。何かムカついた。」
「え、いや何に?」
「いや、よくわかんないけどムカついた。」
「俺にかよ。え、何で?」
「知らねぇよ。ムカついたモンはムカついたんだ。」
「あぁ?」
「しょーがないじゃん、ムカついたんだもん。」
「意味わかんねー」
「意味わかんねーのこっちだし!」
「いや今は俺だろ!」
「はぁ?常識なくない?こっちの方がムカついてんですけど」
「比べられるかよ」
「いや比べられないけど私の方がムカついてるって」
「どういう意味だよ?」
「知らない。ってか煙草吸わないでくれる?」
「あ、駄目?禁煙中?」
「禁煙してないけど吸わないで。ムカつくから」
「何にどうムカついてんだよ」
「知らない。っつーかあっち行ってよ。」
「はぁ?」
「もう嫌。どっか行って。向こういってよ。」

と言う女の口をキスで塞いでしまえばいいのかな?
何度もそう思うが、僕は結局何もしないで煙草をもみ消す
タイミングが悪い上に、言葉に出すのが下手な二人
どっちかが素直じゃないから、お互い素直になれない
傍から見れば、ただのツンデレバカップル
張らない意地は持ち腐れ、とばかりに意地の張り合い

切って張ったらパッチワーク
綺麗に組み合わせれば良いってモンでもないらしい
信用してないから、何時も不安になる
大体不安になるのはこっちの方で、向こうはお構いなし
まるで猫みたいに、気まぐれに走り回る
行ってらっしゃい、好きなところへ

あなたがただでくれたキスは
一番星の様に夜空で瞬いているとかいないとか
素直じゃねぇって、わかってて言えない
あなたの膝枕で眠りたいんだ、と呟いても聞こえてない
あなたの膝で眠ったあいつに嫉妬してる



自由詩 その口をキスで塞がないでいる Copyright 虹村 凌 2007-08-27 11:38:48
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