雨細工の町
石畑由紀子


乱視の交差点が光にまみれている
穴に落ちてしまわぬよう
慎重に渡る


いつか
二人で広げた新しい傘の下
けれど赤と青は紫にはならず
個体であることのかなしみを知った


ほの白く輪郭の立つ道
街灯は長い髪をゆらしながら
横顔で私を一瞥して
すぐにそれぞれの孤独へ帰ってゆき


理容室のネオン管だけが
届かない空に手を伸ばし続けている


傘をほうり
雨を鳴らして歩いてゆく
一人とはどこまでも自由で
どこへ行こう
どこへ帰ろう
乱視の交差点 光る
穴に落ちてしまわぬように
子供が白線だけを踏んでゆくように
慎重に渡る
けれど




なりふりかまわず

本当は飽和してしまいたかった
あの時も、
あの時もあの時も、


あの時も、








自由詩 雨細工の町 Copyright 石畑由紀子 2004-05-27 19:08:26
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