赤光
石田 圭太

 DIVA




 響きのないところに唄は産まれ
  伝えようとしている。

 幾つかはこぼれ
  すでに無くなったのだとして、


 ひとつひとつ、
  朝日に撫でられている喉元の

 澄んでいくように。
  そんな雨で終わりになるなら




   血生臭い光が

   薄くかさぶたの空を剥がす

   降り止まないものに天国を

   見る。寂しい心臓をもう、

   打ち鳴らさなくてもいいと




   あげる

   この蒼い、幾万の筋を、今

   まじわるだろうか、身体に

   そうやって挿し込むほど、

   柔らかく押し返してくれる

   女だと思う。




 ひとつの終わりが耕されて
  すり抜けていく窓際の、

 誰も知らない
  繰り返される音楽が響く。




 ささやかな夕べ、
  伸び悩んだ静けさの中でも

 日々が
  調べ上げられながら、




 波打ち際の会話をしていた。
  千の痛みが垂れた夜の



 見ろよ、
  叫びの浮く水を

 聴けよ、
  あれが産声だ。














自由詩 赤光 Copyright 石田 圭太 2007-08-21 01:49:30
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