タラッサ
ふく




 海だ





群青の腕で絡めとられた僕の右足は
ゆっくりと沈む

息はもう随分前からできなくなっていた気がする
でも、
このしばらく使わなくなっている口からは相変わらず
ため息だけは出るらしい

泡は揺れる天井へダンス
煙草の煙をまとって





 海だ





白い布の海だ
起き上がれない
今日も世界という水圧に負けて
僕は溶けるように夕方に流される





 海だ





天井は見えていた
明るくきらめく水面

深海はよく見えない
でも色は見える気がする
僕の右足を掴む手が、そんな色をしているから

奥の色 奥

いろんな僕が混ざり合って
黒っぽい
群青に見えたのは気のせいか
とっくに灰でできていたと思ったのに





 海だ





箱の中で息だけ吐いていく
いつ吸えばいいんだっけ
煙草の吸い方は知っているのに





 海だ







自由詩 タラッサ Copyright ふく 2007-08-20 22:00:02
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