夏が溶けてゆく
ぽえむ君

夏は自分に耐えられなくなって
自分の体がどろどろと溶け始めていた
青い空が溶けてゆく
白い雲が溶けてゆく
清らな川の音が溶けてゆく
都会の道路はぐにゃぐにゃに曲がって
信号機が次々と倒れてゆく
タイヤのゴムの匂いが町に充満する
生ゴミとアブラゼミの鳴き声が同化する
それでもまだ
夏が溶けてゆく
苛立ったまま行き場を失い
海に逃れた人間は
溶けてゆく海を見て失望する
口を開いたまま浮かぶ魚たちが
生臭い匂いを放ちながら
ゆっくりと溶けてゆく
まだ太陽は沈まない
夏は夏を溶かしてゆく


自由詩 夏が溶けてゆく Copyright ぽえむ君 2007-08-13 21:38:25
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