クランベリー フラワー ソング
千月 話子

白薔薇よ 白薔薇よ
僕の下で 咲いておくれ


うつ伏せで溶けていく熱い腹に
鋭い棘を突き立てて
僕の赤い 
  赤い懺悔を吸い取ってしまえ


ベッドサイドには 欠けた花瓶
無造作に挿した(赤黒い)
ビロードの薔薇 数本


薄い壁の向こうから
耳障りな掠れた女の声がする
 彼女は失恋の歌を 歌っていた


茨の絡まるような感覚
身動きできない僕の腕は
ガラスの器に切り分けられた
瑞々しい桃の果肉を鷲掴み
見知らぬ男に遮られ 遮られては
ひどく 喉が渇いて仕方ない

・・・ちくしょう!
あんたなんて 必要 ないん だ


手の平から内側に流れ伝う
甘い汁を 舐めながら
大人になりかけた声で
隣の部屋の女とは正反対の
歌を 歌う

ラヴィアンローズ ラ ヴィアン ローズ
人生は 薔薇色・・・

ああ、、どうしてか涙が溢れて止まらない


ねぇ 見知らぬあなた
もしも僕の背中から
鮮やかな 鮮やかな
ケシの花が咲いた時
死ぬほど いたぶって そして
身体ごと 燃やしてしまってよ
・・・・・・・・・
そうして僕は 快楽に酔いながら
極彩色の深い淵へと 落ちていくのさ


気だるさの残るベッドの中で
いつも見る夢

父さん 父さん
僕はあなたの先端で
取り残された 宙吊りの雫
ほとばしる事も出来ずに
その内 干乾びて粉々になる運命
父さん・・・ お父さん・・・
僕は一体 何なんだろう


いつか 僕が屍になって
野ばらの下に 葬られて
小鳥の巣から ヒナが落ちて
少女の唇から クランベリージュースが零れて
みんな 土に吸い取られて
幸せが ここから始まればいい

うつ伏せの 僕は 
幸福な事だけ考えている
もう 錯乱しない


ねぇ あなた 
今(夜)の僕は とても甘いでしょう?







自由詩 クランベリー フラワー ソング Copyright 千月 話子 2007-08-07 23:43:35縦
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