ラブアンドピース
恋月 ぴの

べれいれん…だなんて
あのひとが新聞に目を落としたまま
ひとりごとを言ったような

ヴァンヘイレンがどうしたのだなんて
おまぬけな返事をしてしまった
わたし

べ平連
ベトナムに平和を!市民連合
神話を信じていたころの
甘酸っぱい感傷
それは恋心にも似て
ひたすらな思いやりと
押し付けがましくもある正義感と

皆で肩を組み歩き続けた
声を揃え叫んだ
それが何かの扉をこじ開ける力でも生むかのように

ラブアンドピース
ベトナムに平和を!

たとえば
それは
片思いの彼女に宛てたラブレター
そして小田実を
「おだみのる」だと思い込んでいた程度の薄っぺらな情熱

どれだけの人が記憶しているのだろうか
誰が勝利したと言うのか
サイゴンからホーチミン市へ
アオザイの揺らめきはあのときのまま

出勤前の鏡の前で
あのひとは
ネクタイを直しながら
めっきりと薄くなった髪の毛をしきりと気にしている

ラブアンドピース
愛と平和

ひとびとがそれらを望み続けるのは
永遠に手に入らぬものだと認めたくないから

ラブアンドピース
愛と平和

あの頃のギター
もう一度だけ聞かせて欲しい


自由詩 ラブアンドピース Copyright 恋月 ぴの 2007-08-02 22:47:44縦
notebook Home 戻る