廃棄所
ゆるこ

2トントラックに
沢山の腐った死骸を乗せて
叔父さんと二人で焼却炉へ

気まずい車内に酔ってしまうと
何故かだいすきなひとを
じわりじわりと思い出す


揺れる車内に散らされた腐敗臭達は
執拗に気持を高ぶらせるから
泣きそうな顔で空を見上げた



廃棄所の社員達は
一様に無感情な表情で死骸をコンクリートに叩きつけていて
手のこうの血管が戦時中の兵隊に酷似していた

私も叔父さんも
沢山の死骸を無表情で投げてゆく

沢山の死骸が笑ったり泣いたりして
右腕がとれたり臓器がはみ出たりした自分の体を
珍しげにしげしげと見つめていた


全てを吐き出した2トントラックは
尾をひくように臭いを漂わせて
静かに1260円を払っていた



帰りの道は清々しいほど軽やかで
荒い運転が心地好かった

叔父さんは私を投げ捨てて
だいすきなひとのところに走っていった

私は膝をぱんぱんと叩きながら
だいすきなひとの名前を空に
泥だらけの指先で、描いた


自由詩 廃棄所 Copyright ゆるこ 2007-08-02 13:41:38
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