rain
小原あき

夕暮れに
打ち水をした小雨
気が付いたら
夏の涼しさが
玄関に居座っていた

そんなことが
嬉しく思える
わたしは
人に生まれてきて
良かった、と


意味もなく
悶々としていても
自転車に乗って
流れる風を
溢れる木漏れ日を
その肌に感じれば

微笑みが
こぼれ落ちてゆく


こぼれ落ちた微笑みを
きっと誰かが拾って
また、
新しい微笑みが
生まれると
良いな


平凡な日々は
静かで
幸せを書き留めるには
絶好なのだと
木々は言っていた

騒がしい街中は
ひとつひとつの
幸せを隠してしまう
まあ、
それは大きな幸せが
たくさん待っているせいだけれど


幸せのメモ帳を
見せてくれたのは
まだ、若々しい木だった

 じわりじわり、と
 かんじるみずが
 たまらなくくずぐったくて
 でも、
 むねのまんなかが
 むずむずあったかい

雨がたくさん降った日の
メモだった


じわりじわり、と
大地から
嬉しさがこみ上げてくる

きっと、
地球の裏側で
誰かが満面の笑みを
蒔いているのだろう


そこに生える
花は
天まで届いて

打ち水をした
幸せの雨になる



そんな気持ちが
繋がっている










自由詩 rain Copyright 小原あき 2007-07-25 18:42:59
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