ふしあな。
もののあはれ

思うところがあり木の節をじいーっと眺めていたら
目が節穴になってしまった
オロオロと手と足を同時に動かして慌てていると
青リンゴの香りのする見知らぬ誰かさんが
あっちのほうにその辺の事情に詳しい人がいますよと
ガム的なものをクチャクチャやりながら教えてくれたので
そっちのほうへ兎に角歩き出す事にした
おそらく三日三晩ひたすら歩き続けたのだろうか
ふと足に妙な張りがあるなあと擦ってみると
完全に足が棒になっていた
気づいたとたんにもんどり打って地面に倒れると
日差しに強烈に弾かれて喉がカラカラな事に気がついた
だが目は悲しいかな節穴になってしまったようだし
足はどう誤魔化そうにも確実に棒になっていたので
にっちもさっちも動けなくなってしまった
でもあまりにも水が欲しくていじましく喉を大きく開いていたら
ついには喉から手が出てきてしまった
ビジュアル的にかなり気味の悪い出で立ちになってしまったが
道行く人々は僕をパフォーマーか何かと勘違いしているようで
コインをくれる人はいても別段声をかけられる事は無かった
自分で思っているほど廻りは自分の事を気にしていない事を知り
寂しさよりむしろ随分と気分は楽になっていた
僕は異形な姿でなんとか起き上がり
自分の前に遥か続いていくであろう長い道程を
自分の枠に見合う歩調で自分なりに進んでみる事にした
やっとありのままの自分になれたのだろうか
久しぶりに思い出したのだが
小さな頃から吹いているこの風は
いつでも優しさについて歌いながら
僕の背中を未来へそっと押し出してくれているのだった







自由詩 ふしあな。 Copyright もののあはれ 2007-07-22 23:56:19縦
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