それでもまだ〜原点〜
見崎 光
理由など探せないけれど
赴くままに尋ね行く旧家
急ぐように古びゆく様を
呆然と眺めることしか出来ず
異空間の佇みに安心を覚える
理由も探せぬまま
歪む扉をこじ開けた
古さを物語る音はあの頃のまま
荒れ果てた室内を
今もなお支え続ける哀愁の柱
埃まみれの懐かしさが散乱し
泣かずにはいられなかった
理由など必要ない
便利さばかりを欲して
忘れゆく大切な何かを取り戻せれば
それで 良い
語り尽くせぬ喜怒哀楽が
皺を刻んでゆくだろう
理由も与えぬまま
寂しげに送る旧家を後にした
わずかな庭に茂る木々
涙を拭うように包んでは
陽射しに背中を託して笑った
ほつれゆく旧家
それでもまだ
亡んではいない