黝い手跡 (あおぐろいしゅせき)
こしごえ

青い血で書かれた水曜性は、
万年青おもとの実となって赤く結ばれる。
ある、いは、いつになく遠く静かな空で、ある。

店員が しきりにすすめてくる
玄関先に どうかしら
と自分に問う
がしかし 私は迷信だと思う
縁起がいいだなんて……

けれど赤い実を見てみたい
常緑なのもいい
結局玄関先に連れて来た万年青
(今日からうちのこ)


深海の重さだったね
青いヒレで泳いでいたんだ
たどりつくこともないまま
全て 変わりつづけていくね
ここはどこ (
世界の。)(
真空の静脈でつながれている)
波が黒い船を浮かべて
未踏の地を探し求めてしまう
孤独なんだろうか
( 、大空をあおぐ深海魚
噫)!


不自然な雑音ノイズもきこえてこない
仄明りの部屋で黒光りする
万年筆が ブルーブラックのインクを
黄金のペン先から伝えたのち
園芸日記に あたらしい名を記す
そ、れは〈未通過の自転車が輪舞する水曜〉
あるいは〈無名骨〉と、いう
私はまだあの子のことは知らない
これ、からだ








※万年青(「おもと」又は「まんねんせい」という名称。)
→ユリ科の多年草。





自由詩 黝い手跡 (あおぐろいしゅせき) Copyright こしごえ 2007-07-21 11:41:38
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