伝えるすべなんてないから
Rin K






楽しいときほど
思い出してしまうのは
あなたと過ごした夏が、きっと
あまりにも輝きすぎていたから
あいたい、と
そんなき持ちに自分の笑い声で気がついた
だって二年前、あなたと
重ねあった声にとても似ていたから

寂しいときほど
あなたを呼び続けたのは
わたしの失われた影は、きっと
あなただと信じていたから
あいたい、と
言ってもすぐに叶わないことに
気がつかなくて、だから泣いてばかりいた
でもそれは、ふたりとも同じだったはずだよね

最後の日にさ、忘れて行ったでしょう
白いシャツ
洗ってもとれないのは
あなたを流れていた潮の匂い
そういえば貸したままになっていたけど
返さなくていいよ、麦わら帽子
わたしには大きすぎて
前が見えなかったから

シャツもこんな夢も
メアドだってそう、
あなたにとっては終わったものだから
わたしだって意味をなくしてしまいたい
なのにひとつだって捨てられないまま
わたしはいまでもここで下手ながらにも生きていて
あなたがそんなこと、知ろうとしなくなっていたとしても
わたしの世界からはまだ、海は逃げ出していない
あれがあなたのすべてで
これがわたしのすべてなら
季節のようにまた、
こんな日々を繰り返してしまうかもしれない
それでも、いつかここで再び出逢って
もう一度胸がときめいて
強がりもなしで
カッコつけもなしで
もう一度好きだと言えたらいいなんて
なんて思うのはさようならを
昨日の夢でも言いそびれてしまったから

もういいよ
伝えるすべなんてないから
何度でも言えるよ
サヨナラじゃあねバイバイ
さようなら
海のように冷たいひと
さようなら
言葉があまり得意ではなかったよね
さようなら
白砂のように柔らかいひと
さようなら、わたしが生まれた夏のように
愛したひと 



愛して、いました







自由詩 伝えるすべなんてないから Copyright Rin K 2007-07-20 01:22:01
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